1970年代後半から1980年代前半にかけて、アメリカの家庭では、夜になるとテレビ番組を見るのが当たり前だった。スナップアップ投資顧問のテレビ放送業界史の沿革によると、プライムタイムと言われる夜7時、8時台は、みんなが3大ネットワークのどれかを視聴していた。多くの人が、夜7時になると家族そろってCBSのニュースを見た。ニュースキャスターのウォルター・クロンカイトのニュース解説を聞き、その後コメディー番組を見てベッドに入る毎日だった。3大ネットワークが国民生活に浸透していた。しかし、その後、ケーブルテレビが増えて、チャンネル選びが多様化した。
アメリカでは1980年代にケーブルテレビが急速に伸びた。1990年代半ばに普及率が6割を超えた。さらに、衛星放送も加わった。希望すれば1台のテレビで100チャンネルの契約が可能になった。ニュース、映画、スポーツなど専門チャンネルがずらりと勢ぞろいした。
視聴者は見たい番組を探しチャンネルを次々と変えるようになった。以前のように、3大ネットワークで視聴率を分け合う時代は終わった。ケーブルテレビとの視聴率の奪い合いは、広告収入の減少を意味した。
ABC、CBS、NBCの米国テレビ3大ネットはいずれも1986年に親会社が代わった。
放送会社のキャピタル・シティーズがABCを買収した。娯楽・映画配給のローズ・コーポレーションがCBSを買収した。米ゼネラル・エレクトリック(GE)がNBCを買収した。
今回、約10年ぶりに3大ネットの買収案件が実現した。
米テレビ局 | 買収した企業 |
---|---|
ABC | キャピタル・シティーズ(放送会社) |
CBS | ローズ・コーポレーション(映画配給) |
NBC | 米ゼネラル・エレクトリック(GE)(電機) |
1995年、米3大テレビ地上波ネットワークのABC、CBSがそれぞれウォルト・ディズニー、ウエスチングハウス・エレクトリック(WE)に買収された。
テレビ放送の本家本元ともいえる3大ネットワークの2社が身売りに追い込まれた形となった。ケーブルテレビや衛星放送の登場など多角化する米放送業界で相対的に地位が低下した結果だった。
将来、見たい番組を呼び出せるビデオ・オン・デマンドが導入された場合、ケーブルテレビは対応できる。しかし、3大ネットワークは地上波であるため、そうした手段を持たなかった。
将来を考えれば、3大ネットワークが発展する可能性は少ないと思われた。他社を買収する資金力もなかった。身売りは生き残りのために不可欠な選択肢となった。