ギャラクシー賞の歴代の一覧です。テレビ部門の大賞の受賞作。過去から直近の2024年まで。 NHKや民放のテレビ番組の傑作がそろっています。
ギャラクシー賞は、日本のテレビ番組の傑作・名作を選ぶ賞です。 評論家や研究者らで構成する「放送批評懇談会」が主催。 1963年に創設されました。放送業界で最も権威のある賞の一つです。 懇談会の正会員から選ばれた選奨事業委員会が審査にあたります。毎年6月ごろ発表されます。テレビ部門のほかに、報道活動部門、ラジオ部門、CM部門があります。~田村泰彦
年 | 番組名、放送局 | 説明 |
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2024 |
「フェンス」
(WOWOW) ジャンル:連続ドラマ <予告編▼> |
全5話。
沖縄を舞台に女性たちが性的暴行事件の真相を追うサスペンス。人気ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」「MIU404」の脚本家として知られる野木亜紀子さんが脚本を手がけた。 野木氏が「沖縄」を描いたきっかけは北野拓(きたの・ひらく)プロデューサーから「沖縄を舞台にしたクライムサスペンスを作りたい」と提案を受けたことだった。 北野拓氏は1986年生まれ。大阪市出身。2009年にNHKに入局し、2011年までNHK沖縄放送局で報道記者として勤務。現在は、NHKエンタープライズドラマ部シニア・プロデューサー。ギャラクシー賞奨励賞を受賞した「宮崎のふたり」などを手がけた。 北野氏と野木氏は以前、NHKドラマ「フェイクニュース」を一緒に作った。北野氏は社会問題をきちんと取り上げられるプロデューサーなので、野木氏としては「沖縄」を題材にしても可能だろうと思ったという。 WOWOWが手を挙げ、普天間出身の高江洲義貴プロデューサーも就いた。 新垣結衣、佐久本宝、與那城奨ら沖縄出身の著名な俳優だけでなく、沖縄を中心に活躍する役者も多く出演した。 |
2023 |
「エルピス~希望、あるいは災い」
(関西テレビ) ジャンル:連続ドラマ <番組予告と受賞スピーチ▼> |
冤罪事件をテーマに、テレビの報道現場を描く。政治家への忖度(そんたく)など放送界の闇にも迫った。フジテレビ系列の月曜夜10時枠で放送された。
大賞に加えて、長澤まさみが「個人賞」を受賞し、2冠となった。 花形アナウンサーだった恵那(長澤まさみ)は、週刊誌に路上キスを撮られてニュース番組を降板。今は深夜情報番組でコーナー司会を担当する身だ。そこに新米ディレクターの拓朗(真栄田郷敦))が、ある連続殺人事件の犯人とされる死刑囚の冤罪(えんざい)疑惑追及を持ちかける。 主演:長澤まさみ、眞栄田郷敦(ごうどん) 監督:大根仁(ひとし) プロデューサー:佐野亜裕美 脚本家:渡辺あや |
2022 |
「1F リアル あの日、原発の傍らにいた人たち」
(福島中央テレビ) 番組ジャンル:ドキュメンタリー <4分のまとめ動画▼> |
福島第1原発(通称:1F)の暴走を、決死の覚悟で原発の食い止めた人々の思いに迫った。
東日本大震災の発生から10年にわたる取材活動。取材の過程で出会った自衛官や消防隊員、原発作業員ら当時を知る人たちの貴重な証言や映像をつないだ。 |
2021 |
「世界は3で出来ている」
(フジテレビ) 番組ジャンル:ドラマ <出演者・林遣都のコメント▼> |
テレビ業界が初めて新型コロナウイルスの影響に直面した2020年~2021年度。
通常の撮影ができないなかで、各テレビ局は工夫を重ねた。
本作は、制約を逆手に取った高いエンターテインメント性が評価された。
初の緊急事態宣言が解除され3カ月ぶりに再会した三つ子の物語。打ち合わせはリモートで行い、唯一の出演者である林遣都(けんと)が3人を演じ分けた。 他にも「リモートドラマ」など新手法を使った映像作品が次々と発表されていたが、本作は映像と物語性の両面で完成度の高さが評価された。 受賞理由は「(コロナ禍の)制作上のハンデを感じさせず、キラキラと力強い人間ドラマを見せてくれた」とされた。 |
2020 |
「チャンネル4『カネのない宇宙人 閉鎖危機に揺れる野辺山観測所』」
(テレビ信州) 番組ジャンル:ドキュメンタリー <4分のまとめ動画↓> 動画→ |
財政難に苦しむ長野県の電波天文台に1年がかりで密着した。
国立天文台野辺山宇宙電波観測所は、長野県の南牧村(みなみまきむら)にある。 世界に誇る直径45メートルの電波望遠鏡を持つ。 1982年に開所した。巨大なブラックホールを発見するなど成果を上げてきた。 しかし、近年は国の運営費交付金が減り、財政難に陥った。 番組では、観測所が一部施設の閉鎖や人員削減に追い込まれ、立松健一所長ら研究者が苦悩する様子を伝えた。 約40人が働いていた観測所の会議にカメラを持ち込み、職員が減っていく実情を撮影。財源確保のため、地元自治体に有料の観光ツアーを提案する現場も記録した。 ディレクター、高柳峻(しゅん)さんが取材を進めた。東京でビートたけしさんの番組を演出した経験もある。 長野に移住後、情報番組などを担当する傍ら、2018年10月から今回の取材を始めた。 |
年 | 番組名、放送局 | 説明 |
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2019 |
「ETV特集 静かで、にぎやかな世界 手話で生きる子どもたち」
(NHK) |
文化庁芸術祭賞ドキュメンタリー部門との2冠を達成した。 耳が聞こえない子どもたちが、手話で学ぶ学校に密着したドキュメンタリー。 手話に加えて表情や全身を使って伝える子どもの笑顔がいいな、先生や友達と軽口を飛ばし合うのは普通の学校と一緒だな、そんな健常者からの分かったような視点の感想を書こうと見ていた。途中までは。 中盤から、この学校を卒業した大学生の男性にも密着する。語弊を恐れず言えば、目が死んでいる。「耳が聞こえるようになる魔法の薬があれば?」の質問に、学校の子どもたちの多くは「今の自分が幸せだから飲まない」と答えたのに対し、男性の答えは……。 なぜ笑顔の子どもがこんな目になってしまったのか。そしてある出来事で男性に笑顔が。とにかく見てほしい。 |
2018 |
「映像’17『教育と愛国~教科書でいま何が起きているのか』」
毎日放送(MBS)=大阪 ディレクター(監督):斉加尚代(さいか・ひさよ) <監督インタビュー▼> |
教科書検定をめぐる教育現場の攻防を描いた。鋭い問題意識と巧みな構成力が称賛された。
2022年に新しい内容を加えたうえで、映画「教育と愛国」として劇場公開された。監督は、番組ディレクターである斉加尚代(さいか・ひさよ)さんが務めた。映画版も高い評価を集め、日本ジャーナリスト会議の2022年度JCJ大賞を受賞。日本映画ペンクラブの2022年文化映画ベスト1位に選ばれた。 斉加ディレクターは、1987年に毎日放送入社。報道記者を経て2015年からディレクター。 毎日放送の長寿番組である「映像シリーズ」の一環。同シリーズが始まったのは1980年4月。きっかけは、系列局のドキュメンタリー番組が打ち切りに追い込まれたことだった。「関西ローカルだけでも続けよう」という声が局内からあがり、月1回、1時間のレギュラー枠が確保された。1本の作品が放送されるまでに、企画の立案から取材、編集まで数か月を費やしている。 公害や差別、労働、原発といった社会問題を取り上げてきた。番組本数は計約500本を超えた。「下からの目線」にこだわり、地元の子ども食堂など地域密着型の作品も多く手がけた。登場人物は全員が実名であること。そしてモザイクはかけない。「表情が見える人の語る言葉でなければ、真実は伝わらない」というのが信条だ。 1999年の「ふつうのままで~ある障害者夫婦の日常~」は国際エミー賞の最優秀賞を受賞した。 「NNNドキュメント」(日テレ系)や「テレメンタリー」(テレ朝系)といった民放の報道ドキュメンタリー番組は、東京キー局と地方の系列局が週替わりで番組を制作している。毎日放送のように地方局が単独で1時間のレギュラー枠を設け、さらに報道局内に専属スタッフまで抱えているのは、非常に珍しい。 |
2017 |
「NHKスペシャル『ある文民警察官の死~カンボジアPKO 23年目の告白~』」
(NHK) |
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2016 |
「報道ステーション『特集 ノーベル賞経済学者が見た日本』『特集 独ワイマール憲法の“教訓”』」
(テレビ朝日) |
報ステで放送された2つの特集。安倍政権の政策を批判的に検証した。
一つ目は、安倍晋三首相に「消費税増税の再延期」を進言したとされるノーベル賞学者に独自取材。学者がアベノミクスを疑問視し、税制改革を主張していたことを明らかにした。二つ目は、ヒトラーがワイマール憲法の国家緊急権を悪用して独裁政権を築いた経緯をメインキャスターの古舘伊知郎氏がドイツで取材。自民党が改憲草案で示した「緊急事態条項」の危険性を指摘した。 ギャラクシー賞を主催する放送批評懇談会は、選出理由について「テレビは報じるべきを報じているか、国民の知る権利に応えているか、と問いかけられる中、重要課題を果敢に取り上げた」としている。同懇談会の関係者は「あくまでも番組の中身が選考基準。政治的スタンスは評価の対象ではない」と話す。 だが、評価にはメッセージが付き物だ。隔月誌「放送レポート」編集長の岩崎貞明氏は「安倍政権に対して『これでいいのか』と問いかけたことが評価されたのだろう。『こんな番組をもっと作ろう』という同業者への叱咤(しった)でもある」と推察する。 (東京新聞・2016年6月4日特報1面より) |
2015 |
「QABドキュメンタリー 扉2014『裂かれる海~辺野古 動き出した基地建設~』」
(琉球朝日放送) 動画→ |
基地新設問題で対立する辺野古の状況を追った作品。政府の新基地建設の調査強行で反対、賛成に分かれた住民をとらえた。太平洋戦争の沖縄戦から米軍統治時代を経て、今なお続く基地の重圧が映像から伝わる。 |
2014 |
「連続テレビ小説『あまちゃん』」
(NHK) |
岩手を舞台に、能年玲奈(のん)さんが演じる引きこもりがちの東京の高校生、天野アキが、祖母・夏(宮本信子さん)の影響で海女になり、成長していく物語。 登場人物は挫折や苦悩を抱え、大震災という試練にも恨み言を言わず、日常を力強く生きていく。驚いた時に連発される方言「じぇじぇじぇ」は流行語になった。 視聴率は17%未満(関西地区、ビデオリサーチ調べ)。飛び抜けてはいない。でも関連CDはオリコンチャートで軒並み健闘。アキの母・春子を演じた小泉今日子さんの「潮騒のメモリー」は初登場2位。アルバム「あまちゃん 歌のアルバム」は1位に輝いた。キョンキョン(小泉さん)、人気女優の鈴鹿ひろ美を演じた薬師丸ひろ子さん。1980年代にアイドル的人気を博した面々が活躍した。 能年さんの写真集も約5万部を売り上げた。約230種ある関連商品の売り上げも順調。岩手県内への経済波及効果は約33億円ともいわれる。 「あまちゃん」は男性の心をつかんだ。特に80年代アイドルに夢中になった40、50代が狂喜乱舞。夫婦仲がよくなったという人も。 |
2013 |
「NHKスペシャル シリーズ東日本大震災『追跡 復興予算19兆円』」
(NHK) |
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2012 |
「連続テレビ小説『カーネーション』」
(NHK) |
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2011 |
「NNNドキュメント’11『夢は刈られて 大潟村・モデル農村の40年』」
(秋田放送) |
米国型の大規模農業をめざし、干拓地に入植した3人の歳月を継続取材した。 秋田県・八郎潟(はちろうがた)を干拓して作られた大潟村(おおがたむら)。大規模米作のモデル農村とされたが、減反政策が始まると入植者の夢は挫折する。 彼らの夢と情熱は、国の減反政策に翻弄される。徹底抗戦した1人は、契約違反で村を去る。1人は数千万円の借金を背負いながら、コメの市場開放に反対する。もう1人は産地直送会社を設立し、米粉づくりに活路を見いだす。地元に密着するローカル局ならではの、現場からの報告だ。 秋田放送は日本テレビ系「NNNドキュメント」だけでも約20本の農業ドキュメントを制作。政権交代で農業政策が変化したのを機に、40年の歴史をまとめた。 減反のための青刈りを拒否し続けて最後は村を追われた農家や、米の輸入をやめるよう国に主張し続ける農業男性らを、3人のディレクターが長期取材。過去から現在までの経過を丹念に描いた。 石川岳ディレクター(42)は「減反に反対する農家を追い続けた、ぶれない姿勢が信頼感を得た。地元放送局だから裏切らないと、信じてくれたのだろう」と語る。 日本の第1次産業をどう立て直したらいいのか。地域に根を張るジャーナリズムが粘り強く追い続け、全国に発信すべきテーマだ。 2011年のギャラクシー賞は、「テレビ」「ラジオ」「報道」の3部門の大賞を、地方民放局のドキュメンタリー、報道活動が独占した。地道な継続取材、取材者の執念、地元密着の視点。受賞3作品には地方局ならではの強みが凝縮されていた。 |
2010 |
「ETV特集『死刑囚 永山則夫~獄中28年間の対話』」
(NHK) |
死刑か無期懲役か――。もし裁判員になって、そんな究極の選択を迫られたら、果たして判断を下せるだろうか。そんなことを考えさせられる作品。 1968年、19歳の永山は連続して4人を射殺、翌年逮捕された。一審は死刑。二審は無期懲役。最高裁は高裁に差し戻し、高裁で死刑。最高裁で確定し、1997年に刑が執行された。 番組は、永山が残した1万5千通の手紙や肉声テープ、獄中の永山と結婚し、後に別れた和美さんらの証言を通し、永山の心の軌跡に迫っていく。 貧しい生い立ちから、いつ死んでもいいと公言し、激しい言葉で社会を糾弾していた永山が、和美さんと出会い、鎧(よろい)を脱いだように素直に悩みを打ち明け、生きて償おうと思うようになる。 そしていま、あらゆる死刑判決で引用され、死刑の基準とも呼ばれる「永山基準」だが、それが示されるまでの曲折と関係者の苦悩を見ると、人を死刑にする画一的な基準などあり得ないと実感する。取材したフリーディレクターの堀川惠子さんは「不完全な人間が、不完全な人間を裁くことの大変さや重みを考えてもらいたい」と話す。 |